ここからが後半戦。後半戦の最初は社会心理学。社会心理学は特に歴史が浅い学問というわけではないが、社会学と心理学の両方の源流があることから、やはり他の伝統的な心理学領域とは異なる。特にマクロなことに関心を持つのは、(今の社会心理学者にはあまりいないものの) 社会学の伝統が生きている。個としての知覚、認知、判断だけを考えていてはだめだよ、ということでこの授業でも取り上げる (なお、僕は社会心理学者であったり進化心理学者であったりする。やっとここらへんからが専門領域)。その次に取り上げる発達心理学と進化心理学はわりと似ていると思う。個体発生の観点からヒトを見るか、系統発生の観点から見るかの違いがあるが、基本的にはこれらの領域は生物学の範疇 (といったら怒る発達心理学者がいるかもしれない) になる。最後は研究法であるとか研究倫理の話をする。
状況のことをマクロと呼び個人はマイクロと呼ぶことが分かった。
マクロとマイクロの違いは経済学にもありますね。もともとの意味は辞書で調べておいてください。
社会心理学の実験は若干は非人道的ともとれる実験もあってやりすぎにならないようにして欲しいものだと思った。
今はそういうのは倫理申請を通らないからさすがにやらない。でも、個人的にはやりすぎな実験をどんどんしたいと思ってしまうくらいにはマッドサイエンティスト脳です。
話は変わりますが、いつも、例えを用いて説明してくれていますがこれは先生が考えた例を書かれているのですか? 毎回、とてもわかりやすいので助かっています。
例え話で理解してもらうというのはちょっと邪道なんですが、そうでもしないとなかなか文章でわかってもらうのは難しいと思って入れています。全部もちろん僕が考えたものです (この教養の授業のために書いた教材なので、心理学を専門としない学生にも興味を持ってもらえるように考えて書いてます)。
人間は予想できない行動をすることがある
いやいや、あなた、それはこの授業を履修しなくても分かることでしょう。予想できない行動って例えば何? もう少し考えよう。
質問なのですが、この実験で450ボルトまで電流を流された人は本当に亡くなってしまったんですか? また、これは関係ないのですが、先日友人と話している中で、鏡に向かい「私はかわいい」と言い続けると本当にかわいくなるという話題が出た時、私は「お前は誰だ」と言い続け、最終的に精神が崩壊したという実験を思い出したのですが、この2つの原理が知りたいです。
それは3ページ目の脚注4を読めば分かる。精神が崩壊した実験のことは知らないですが、「私はかわいい」と言い続けてもかわいくはなりません。かわいいは作れますが、そんなやり方ではだめです。
自分の体験になぞらえて考えると、印象にも残りやすいので、これからも自身の経験と比較しながら取り組んでいきたいです。。
ところが、そうすると自分が経験したこと以外は分からない、ということになってしまう。入口は分かりやすい例だが、やはり最終的には理論として、概念レベルで分かる必要があると思う。例だけで理解したつもりになることも危ない、ということを頭の片隅でいいので入れておいてほしい。
気になったのですが、215の、図04-04について文中で触れていなかったので、せっかくでしたら触れた方がよいで野はないかと思いました。また、293の表04-04で、表右下の低学力期待、遂行の階級は「貧しい階級」ではないでしょうか?
215行目のところ、確かに本文に参照がないですね。「アッシュは、図04-04のように、全体的な印象がまず形成され、それが個々の特性に影響すると考えたのだ」というのを210行目あたりに挿入する必要がありますね。203の表04-04はおっしゃるとおりです、これは右下は「貧しい階級」ですね。どうもありがとう。
予言の自己成就の現象がいまいち理解できなかった。。
何行目のどの記述が分かりませんでしたか? (と聞いてもそれに対して返事があることはまずないのだが、できれば次のリアクションペイパーで書いてほしい)。
予言の自己成就の説明を読んで、なんとなく「いじめ」と関連性があると思いました。大人が「子供たちのいじめは年々深刻化している」と思い込み対策を講じれば、子どものいじめは表面化しにくくなりさらに酷くなる……。実際に大人の思い込みと子どもたちのいじめに関連性はあるのでしょうか。
それはあると思いますよ。しかし、対策を講じた時の効果と、表面化しにくくなることの効果のどちらが大きいかは簡単には分からないと思います。「いじめがひどい」と思うことによって見つけられるいじめもあると考えるとそのことが分かると思います。
疑問に感じた点としてはミルグラムによって行われた服従実験にて教師役が生徒役に対して電気ショックを流す (実際には流していないが) 際に人が死んでしまうであろう450Vの電流を掛けたとあるが、教師役は450Vは人が死んでしまう程の電流である事を知っていたのか (事前に電流の強さん基準を教えてもらっていた等) が気になった。素人からすると、どこからどこまでの強さの電流が適切な電力量か分からなかったからこそ、こういった結果になったのではないかと考えた。
これは基準も知らされていたし (装置にラベルが描かれていました)、被験者役の人は心臓が弱いとも言われていたのです。
例えば、潜在的に存在しているカースト (陽キャ、陰キャのような) は自分が評価されたいといった心情や、他人との比較において成立しているのであれば社会的比較に当てはまりますか?
自分がどの程度陽キャか陰キャか、という情報を得る場合に周囲の他者と比較して判断する、という意味ではこれは社会的比較が関わっていると思います。
「社会的ジレンマ」はゲーム理論と似たようなものですか? それともゲーム理論の中の1つですか?
アッシュの「中心特性」と「周辺特性」の実験について例えば色が黒や紫などの暗い色で塗っており、その中に人が立っている絵を見て、説明で「この人物は優しくて温かくて知的な人です。」と聞いたときは目と耳のどちらの方に印象が残りやすいですか?
一つ目、社会的ジレンマはゲーム理論でも分析されています (「公共財ゲーム」と言われることもある)。基本的にふつうの社会的ジレンマではゲーム理論で考えると誰も協力しなくなります。二つ目、ちょっと質問の意図が分からないのですが、これは多分「優しくて」と音声で紹介してあるのに、黒く塗られている、その場合、「暗い色」というネガティブな視覚情報と「優しくて」という音声情報のどちらを優先するか、ということでしょうか。色だとどうか分かりませんが「意地悪そうな顔」と「親切だ」という紹介などだと分かりやすいかもしれませんね。僕の答えは「分かりません」です。やってみないと分からない。あるいは誰か既にやっているかもしれませんが、それを知るには文献レビューが必要です。ただ一つの研究を見つけるだけではだめで、その結果がちゃんと安定して得られているかどうかも確認する必要があります。なので、現時点では分からない。
社会が人々に影響を及ぼすというのは、言葉にせずとも誰もが、うっすらとでも実感しているのではないかと思う。しかしその社会を生み出したのは、作っているのは当の人々であるという事実が、いったいどれだけの人々の理解に根付いているだろうか。僕のお母さんは実家暮らしの僕をよく怒るが、そうさせてしまったのは一体なぜなのか。身近なところに社会心理学の本質的な問いは隠れているのかもしれないが、マイクロ・マクロ・ダイナミックスで考えれば僕とお母さんは手を取り合って生きていくべきなのだ。
個人的な感想で言えば、お母さんに怒られるのはお母さんが怒らせる行動をしているからだと思う (トートロジー)。
1971年にスタンフォード監獄実験が大学の地下に模範牢獄を作り、24名の一般人に実験をおこなっている。現代では考えられないことであり、その大学に通う生徒はこの実験が地下で行われていたことを知っていたのだろうか。
「生徒」じゃなくて「学生」です。これは間違えないようにしてほしい。生徒は中等教育 (中学、高校) で学ぶ者の呼称です。学生が知っていたか、ということについていえば、わざわざ大々的に宣伝はしないでしょうから、知らなかったでしょう。実際、あなたもうちの心理学科でどんな実験をしているかは知らないですよね?
今回の授業では特に、個人と社会の相互構成的なあり方について、状況が人に決定的な影響力を与えることが心理学のうちのひとつであったことがわかった。それをふまえて、状況や環境が人に影響を与えることは本講義で引用された例を見れば理解できたが、そもそも心理学とは観察可能な行動を対象にした学問である (第1回講義) ので人だけでなく、人以外の動物だったり植物でも環境によって与えられる影響が変わってくるのではないかなと改めて思いました。また、コロナウイルスによってトイレットペーパーが品薄になった、物理的な現実としては誤っているが、人々の誤解によって社会的現実を構成してしまったことについて、自分は今後AIが人が予想する以上のことを自ら考えだし始めることによって今回の騒動以上のことが起きそうだと思いました (AIの予想が正確になっていくと思われるが、万が一のことが起きたら……)。
AIも基本的には人間が考えたものですから、そこまで怖がる必要はないと思います。AIの設計次第だし、設計するのは人間だというところを忘れてはいけないと思います。
フカマルのコミュニティデイどうでしたか?
息子とめっちゃゲットしました。ただ、色違いのキラを交換でゲットできなかったのが悔やまれる。
前回の授業内容と被るところがあるかもしれませんが質問があります。昨日、友達同士で浮気度を診断する心理テストを2種類行ったところ、矛盾した結果になってしまい、心理テストは当てにならないと思いましたが、先生はどれくらい信憑性のあるものだとお考えですか? その心理テストはインターネット上から見つけたもののため、その心理テスト自体が誤った形式のものだと疑うべきだったのでしょうか。これは私のメディアリテラシー不足が原因なのか心理テストにそもそも信憑性がないのか非常に気になります。
明らかにインチキなものです。浮気度を診断する専門的なテストはありません。これまで浮気をしてきてたかどうかで、テストをしなくても、自分のことくらいは分かりますよね。ちなみに僕は絶対しません (浮気をする人も「絶対しない」と言いながらする、と考えると味わい深いですよね)。
よくネット上で血液型での性格診断や、生まれた月の星座での性格占いのようなものを見かけますが、それらにも心理学って関係しているんですか。
大いに関係しているが、性格心理学のところでも言ったように、血液型からある人の行動を予測するのはまず無理です。
もう少し動画時間が長くてもいい気がします (10分程度の動画が好ましい)。
もっと僕のしゃべりが聞きたい、といううれしい声だと思いました。ごめん、でももう全部撮ってあるので、これで許して。直接しゃべりたい、ということであればいつでも時間は作ります。遠慮せずに研究室にお越しください (多分約束しているといえば大学には入れる)。コーヒーくらい入れてもてなします。動画は、来年もこんなのでやらないといけないとしたら、もうちょっと長くするかな。
社会的ジレンマはとても面白いと感じました。なんだか漫画などで起こるデスゲームみたいな感じでワクワクしました。(多分失礼) と思った矢先に国の話題が出てきてかなり身近で起こってるんだなと思いました。SDGsは中国の協力がない限り達成出来ないと言われているのも社会的ジレンマに入るのかと考えたりしました。
まさにそうですね。環境負荷を減らす行動にインセンティブを与える必要があると思います。
中西先生、xxxxx学科x年のxxです。先ほど心理学の小テスト09を受験したのですが、受験中に突然shudo-moodle内のページが更新されなくなり、ロードが終わった時には小テストの制限時間が終わっており途中までしかテストに取り組むことができませんでした。(中略) 実際の状況を動画ファイルとして添付しております。どうか救済措置をよろしくお願いいたします。
申し訳ありませんが、こういうことが起こったときには個人的なメイルですぐにお知らせください。ここに書かれても対応することできません (これを読むのは試験が終わった後です)。試験は終わった後に解答が表示されますので、それ以降は何があっても受験し直すことはできません。
第9回が配信された6月8日は僕の誕生日でした。僕は毎年プレゼントをもらわないんですがそれは当たり前なのでしょうか? 先生のご意見を聞かせてください。
年頃の男の子がプレゼントも貰わない寂しい誕生日を過ごしているのかと思うと僕も辛くて目頭が熱くなります。研究室にきたら飴ちゃんくらいあげます。20代、30代の若い講師、助教授時代にはバレンタインデーにチョコレートをくれる学生がいましたし、ゼミでは誕生日をケーキで祝ってもらったものですが、45歳のキモいおっさんとなった今は誰も僕の誕生日など聞きません。そういうものです。若いんだからもうちょっとがんばれよ。