「進化心理学」の感想 (8 Jan, 2021)

最後の授業のフィードバックを返すのを忘れていました。1月8日はオンラインですが、1限目にまとめ、2限目に最終試験 (Moodle上での受験) です。本来なら質問コーナーなどを設けるところですが、オンデマンドということで授業全体のまとめをする動画を見てもらい、その他TEDなどの関連教材を貼り付けておいて、それらのいくつかを見てリアクションペイパーを書くという時間にしてあります。

最後のコメントを読んで、やはりコマシラバスと文章教材は学生のコメントも豊かにするなと思いました。これまでの授業とは全く異なる濃いコメントが多いです。

生物学上の見解では生物は一直線に進化し,微生物→植物→魚→哺乳類→サル→人間というように人間が最終地点であった。しかし進化論的に考えると進化は複雑に進んでいき,絶滅してしまった親せきの生物とわれわれは繋がっており,生物すべてとつながりあっているとされる。

完全に間違っています。「生物学上の見解」というのを「多くの人々が誤解している見解」とすれば合っています。

感想です。これまで「まとめ」の回が設けられていた授業 (大学ではなく高校等だったかもしれない) では、「まとめ」というと自習などにあてられていて何が「まとめ」かがよく分からないものでした。ですがこの授業には「まとめ」の授業回にも資料がありました。そしてこれまでの内容全体を見渡せるように書かれていたので理解がしやすかったです。

本来ならば対面でちょっと議論なども入れながら展開したいコマではあったのですが、しょうがないですね。でも理解がしやすいと言ってもらえてよかったです。

あるフィクションで、もしも戦争が存在しない世界だったらと想定した話があり、そこでは戦争がないゆえに他国との生存や技術競争も少なく進歩の停滞が見られるという設定でした。技術の中にはもちろん偶然発見され、のちに悪用される形となってしまったものもありますが、画期的な発明ほどもともとが戦争などで使用するために開発され今は平和的に使用されているというものの方が確かに圧倒的に多くあるように私は感じます。

戦争 (殺し合い) はおそらく進化のスピードを増したでしょうね。でも、ここらへんは結構議論がある領域で、どの程度戦争がヒトの進化に影響を与えてきたかについては分からないことも多いです。

本授業を履修することによって生じたいくつかの思考の変化についてお話させていただきたいと思います。
一つ目は、進化に関する偏見がなくなりました。初回の授業でお話させていただいたように、私は保守的なプロテスタントの家庭で育ちました。進化に関する知識や情報を接することは厳しく禁止され、「お猿が人間になるみたいな話は信仰がない人でも信じてはいけない」と両親はお話しました。親は大学で生物学を専攻しましたが、本授業でも言及されたキリンの首に関する話をこどもの時からよく話しながら批判しました。授業内容を親にお話すると、「私たちの知識が古い」という話をして、とてもこの授業に関心を持ちました。履修をしている私だけではなく、進化に関してとても否定的なステレオタイプを持っていた人々の考えを変えてくれました。時間が経っても「遺伝子単位」「世代」という単語だけは永遠に忘れられないと思います。

進化についての誤解を解くと言うのはこの授業の大きな目標なので、それがとりあえず達成できたようで、たいへん嬉しいです。一方で、信仰と進化論をどう両立させるかは難しい問題でしょうね。

二つ目は、進化心理学と社会心理学の接点を理解したことです。実は心理学を専攻しながら、社会心理学がどういうことなのか、進化心理学はどこから派生したものなのかについてしっかりと知りませんでした。ざっくりとした感じで同調に関する研究や監獄実験などといった一部の実験で理解するだけでした。しかし、適応度や様々な社会の現象を進化的観点から接近する方法論を知ることにより、社会心理学、また進化心理学について学びを深めることができたと感じられます。特に、メタ理論などの概念は学問をするに当たって、どんな分野でも適用できる部分であると思います。本科目を担当してくださった先生を含め、横田先生が進行していらっしゃった研究がどういったものかについて理解できる背景になりました。
自分が日本語を母語としないせいか、かなり難しい部分もあり、全体を完璧に理解したとは正直言えません。様々なゲーム理論はまだ個人学習が必要であると考えられますが、今までできなかった考えや知識を接することはとても意味深い時間でありました。今回使われた教材が早く出版される日を楽しみにお待ちしております。対面と非対面を含め、2020年度の進化心理学を担当してくださったことに感謝致します。

いえいえ、確かにあなたは日本語を第1言語とはしていませんが、他の日本語話者以上にこの授業のエッセンスを理解しています。このコメントを読んで授業をやってよかったと思いました。ありがとうございます。

40億年の進化を6分でど動画を観たのですが,単細胞がずっと進化をし続けているのならば人類もこの先進化するのですか?

「人類もこの先進化するのですか」という質問から、あなたはまだ人間が進化のゴールにいるという偏見を捨てきれていないことが分かります。ぜひもう一度1回目の教材を読んでみてください。

これまで心理学系の講義を受ける中で,特に概論的な部分の説明を受ける際には,生理学や脳科学に関わる部分が取り沙汰されていたような印象だったため,それらの分野が心理学の根幹を成しているように感じていた。しかし今回の講義で進化論の説得力を見て,これが多くの心理学の土台となる事が期待されるだろうと思った。生理学や脳科学の分野から心理学に応用すれば特に臨床分野の研究が発展するだろうけれど,進化論を土台として扱えば社会心理学等の文化を取り扱う分野といった,より幅広い研究が発展していくだろうと思う。その意味では,先生の仰っていた通り,「進化心理学」という一学問分野が確立するよりも,これをベースに様々な心理学領域が発展していくことに期待したい。

生理学や脳科学自体も進化的な視点から捉えることができるわけなので、科学であればどの領域も無矛盾に説明できるべきですよね。

一卵性の双子は生後すぐに別れても、類似性があること。→なぜ類似性があるのかについてはよく理解できなかった。

遺伝子を100%共有しているからです。

また、学校に1人はスクールカウンセラーがいることと、全ての先生がカウンセリングマインドを学んでおくことはできることならどちらも必要なことだと思います。両方ある方がより効率的に、手厚く対応することが出来ると思うからです。

しかし、スクールカウンセラーの配置はタダではできません。どちらがより効率的に税金を使えるかという視点は必要です。

進化心理の授業は自分たちに関わることであり,どうやって人間がこの現代まで生存しているのか,についていろいろな説を通じて学びました。どの説も面白く,納得できるものもあれば疑問に思う点もあり,勉強していて楽しかったです。途中からオンラインになり色々大変でしたがありがとうございました。レジュメが文章形式で読めば理解できたのでとてもありがたかったです。

楽しかったと言ってくれてたいへん嬉しいです。最後まで対面でやりたかったですねえ。

文章量は多かったですが,メモを最小限にすることができたので講義中の話に集中することができました。短い間でしたが,ありがとうございました。

このような形で教材を配布したのは、僕がしゃべることに集中したいから、ということもありました。

進化論とは複雑なものではなく証明がとても簡単なものだということが分かった

そんなことはありません。「照明」という言葉はこういう時には使いません。

キリンが高いところの木を食べようと、どんどん首が長くなっていったように、人間も今の体の構造的に不便だなと思っていることが数千年後には全く違う形になっている可能性もあると思うととてもおもしろいと感じました。

残念ながらこれは獲得形質が遺伝するという間違った説です。授業でも説明しました。

遺伝子の突然変異が進化をもたらすと動画であったがもしそうだとしたら全てが偶然の賜物になってしまう可能性があるのでしょうか? そうだとしたら学問を学ぶことは全て偶然に帰着してしまうということもあり得るのですか?

偶然の影響力はとても大きいです。それを明らかにするのも学問です。しかし、全部が偶然で説明できるとは思いません。どこが偶然で、どこがそうではないのか、研究を進めることで明らかにできると思います。

この授業の最初の頃はすごく難しい内容だなと思っていたけど、当たり前にやっている行動を進化や理論を基に考えていく面白さを感じるようになりました。最後の方が非対面になってしまったのがとても残念ですが、物足りなさを感じない授業でした。ありがとうございました。

「物足りなさを感じさせない」というのは最高の賛辞です。ありがとうございます。

三つ目、四つ目の動画は日本語訳がなかったうえに長い動画でしたので内容を理解することができませんでした。

日本語字幕を出せるので、もう一回見てみてください。

進化心理学について、履修登録の際にはほとんど知識のない状態でしたが、授業を受けて、自分の中の誤解が溶けた部分も多かったように思います。進化についてやダーウィンの進化論について、高校までの生物の知識ではふんわりしかわからなかったことの解像度が少し高くなりました。思い返してみると、「今」について考えることにも繋がりがあるということが最初に授業の中で気がついたことでした。進化心理学の研究は性淘汰の内容が多いということは、授業を受けた後に振り返ると少し意外に感じました。進化心理学の未来についての話では、発達心理学などの授業で「人間に本能はあるのか」といった題材を扱う時など少しだけ進化の話が出てきたりしていたので、なるほど考えてみればやはりほかの心理学の分野にも関わる部分たくさんありそうだなと改めて思いました。批判的に見ることや客観的に見ることが大切だと言うことはわかっているのですが、どうしても授業で習ったことを鵜呑みにしがちなので定期テスト後にもう一度振り返って考えようと思います。他の授業で知ったこととの矛盾点などは思い浮かぶのですが、自分で考える力がまだまだだなということも改めて気がつけました。

「解像度が少し高くなりました」といいうコメントが嬉しかったです。そうです、ぼんやりした世界に少しでも輪郭を与えることができたと思えることは授業をやっていてたいへん喜ばしいことです。

確かに進化心理学を用いて様々な心理現象を説明することは可能になるのかもしれないが、やはり、ものによっては、進化心理学的な回答よりもそう考えないほうが人生豊かに生活できるのではと思ってしまった。

まあ、それはそうかもしれません (笑)。

人間の盲点だったり、非合理的な器官が存在するのは進化の結果であることが面白いと感じた。その時代に適応していく中で、将来人間は顎の力が弱くなったり筋力が無くなることで宇宙人みたいな姿になるという噂話を聞いたことがあり、本当の説なのか疑問に思った。

将来の環境を予測することができない以上、それが「本当」とは断言できないでしょうね。