遠隔授業を簡単にMoodleで済ませる方法 (広島修道大学の教員向け情報)

COVID-19が猛威を奮っており、うちの大学でも授業開始を2週間遅らせる措置が取られることになった。3月末の現時点では4月6日開始を20日開始に遅らせることが決まっているが、おそらく授業日数が足りなくなるため、何回か分はオンラインでの実施が必要になると思われる。もちろん、授業開始が2週間遅れで済むというのはまだ楽観的な方で、最悪前期は対面での授業実施が困難になるという可能性もある。いずれにしても、遠隔授業を含んだ対策を考える必要がある。ここではMoodleを使った最も簡便な方法を提案する。

Zoomなどを使った実況中継的なやり方 (Webinar方式とかいうそうだ) もあるが、例えば「授業回数が1回足りない分をオンラインで」といった場合には、こうしたリアルタイム形式は結局学生全員が複数の授業を見られるように時間割を設定しなければいけないので不便である。そもそも学年暦上数週間分が足りない、という事情であれば時間割を組むことが困難であるという可能性もあるわけなので、リアルタイムにこだわるのは下策である。Webinar方式はゼミなどに限って運用するというのがうちの大学の場合には現実的と思われる。講義に関して、映像と音声が必要であればYouTube等を使ってオンデマンドで試聴できるようにしたほうが運用上便利だろう。

あるいは、KeynoteやPowerPointに音声を付けて学生になんらかの方法で閲覧させるという手もある (Keynote / PowerPoint)。映像 (教員の顔?) がなくてもいいならこれは悪くない。ナレーション付きで作成したKeynoteやPowerPointファイルを動画に変換してどこか適切なところ (Moodleなど) にアップロードして学生に聴かせることができる。

しかし、そもそも映像や音声がなければ遠隔授業ができないわけではない。Moodleを利用し必要な資料をアップロードした上で、学生に自習をさせるという方法である。とはいえ、スライドを使った授業の場合、スライドを配布してレポートなどを書かせて終わり、というやり方はあまり望ましくない。多くの場合スライドはあまりに不親切だからである。なお、この点に関してはすでに『シラバス論』への書評としてAmazonに書いてある (参考)。対面式授業では箇条書きで展開されるスライドの要素と要素の関係を繋ぐトークがあり、それを学生のノートテイクで補わせるのがふつうである。授業を聞かずにスライドだけを見て理解できる学生はおそらくその授業を聞く必要のない学生だけだろう。

そのため、映像や音声を使わない場合でも、スライドを使う授業では、そのスライドを使ってトークする内容を文字として起こす作業が必要になる。授業内容にもよるが、おそらく90分の授業で5000字から10000字程度の書き起こしテキストになるものと思われる (教科書の1章に相当する分量)。Moodleを利用して、スライドをPDF化したものと、そのスライドについて解説したファイルをアップロードし、それを学生に読ませた上でレポート (課題機能) を提出させたり、小テストを実施させたりする、といった方法がわりと簡便にできる方法である。ずいぶんバージョンは古いが、『Moodle事始めマニュアル』というものを以前作成したので参考にしてほしい。また、手っ取りばやく教材をアップロードする方法だけを知りたいということであれば、去年の秋に行った講習会の資料を参考にしていただいてもよい。Moodleを使って行う場合には、まず情報センターが学生した「Moodle コース申請〜コース公開までの手引き」に従ってコース (基本的に1つの授業につき、1つのコースを作成する) 作成を申請していただく必要がある。もちろん、本当に学生が書き起こしテキストをきちんと読んでくれるかどうかといった問題や、YouTubeに慣れた世代には文章よりも動画のほうがよいのだ、という意見もあるだろう (が、僕のように文章のほうがよい、という人もいる)。一つの方法として参考にしていただきたい。