「心理学概論I 2013」の感想 (13 June, 2013)

学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。Moodleの小テストがちゃんと解答しても0点になる現象は確認しています。Moodleの不具合ですが、そのうちちゃんと採点されるので心配しないでください。クーラーが寒かったそうですが、僕には温度調整をする権限がないので、教務課などを通じて要望を出してください。

前のオスとの子供を殺すハヌマングール (原文ママ) のオスには情というものは無いのですか?

情というのは人間の発明物。でも、そのヒトだって、継子の方が実子よりも殺される確率が高い。

子孫を残す上で女性と男性が受精したら、もう男性は役に立たなくなると「ホンマでっか」で見たことがあります。

ウソ。男性が持つ (あるいは持ってくる) 資源が子育てにはとても重要。

種のために自己犠牲をすることはないとありましたが、自己犠牲した結果種の保存につながったのでしょうか?

いや、自己犠牲しないし、種の保存なんて概念も誤りという話。

ふとした質問なのですが、先生は”あいさつ”はどれくらいの常識と考えますか?

どれくらいかは分からないのだけど、知っている人と会ったら挨拶くらいはするよね。大学の教員でも全く挨拶しないで無視するようなひともいるけど、やっぱりそういうひとを見ると「常識ないな」と思う。とはいえ、必ずしも僕の常識は他のひとと共有されているわけじゃないから、しょうがない。

オーソドックスな概論の授業内容とは何ですか?

心理学史 (これまで行われて来た心理学の研究の紹介) を薄く広くやるのがオーソドックスな概論なんじゃないかなあ。

何故、スズメや生物が自己犠牲をしないと言い切れるのですか?

自然淘汰のメカニズムを考えると、純粋な自己犠牲が進化するわけがないから。それは論理的に分かること。自己犠牲する個体が進化するためには、自己犠牲する個体がたくさんの子孫を残さないといけない。そんなことがある?

ところで、なぜ小学生くらいの男の子は乗り物 (バスや電車) や自転車と競争したがるのでしょうか? 先生のお子さんもしてますか?<?

うちの子はしないなあ。でも走るのは好きだね。

(ゲームより) 本を読む方が好きです。

そういうひとは進学して研究をしないと。

Y先生の実験を受けたのですが、結果や内容を実験協力者に公表されないのでしょうか? 報酬が変動性ってひどい話だと思います。

謝礼として一定の額はもらえるのだし、その話はリクルートの時に聞いていたと思うけれど、説明はありませんでしたか? (少なくとも実験参加者登録の時にそういう説明はしています。ひどいと思うなら参加しない自由ももちろんありますよ) 結果はおそらく全ての実験が終わった段階でフィードバックされるはずです (「ディブリーフィング」といって心理学の実験では必ず行われます)。

先生は、心理学を勉強していて、良かったなと思うこと、または役に立ったなと思うことはありますか?

これで就職して食べて行けるようになったので、とても役に立っている。様々なものを相対化して見るようになって、これはよいことと悪いこと両方があるような気がする。

動物の子殺しについて、「宗教・思想が動物にもあるんじゃないか」みたいなことを聞いた覚えがあるのですが、何か知りませんか?

これは知らないなあ。

土曜日の補講に出席できないかもしれません。今回の場合欠席届は必要ですか?

不要です。こちらの都合で時間を変更するので、全員出席したものとみなします。

エソロジーの父のうち、ローレンツとティンバーゲンは知っていたけど、フリッシュは知らなかったです。

フリッシュ涙目……。フォンがついているから、もともと貴族なんだよ。

自分の子孫を残こしたい (原文ママ) がために、雄と雌は交配しますが、結果としてそれが「種の保存」ということになるのではないですか?

そもそも「子孫を残したい」ために交配するわけではないし、「種」ではなく、自分の遺伝子のコピーを作る行動なので、やはり「種の保存」ではない。

個体間でコミュニケーションをとることは対立しにくくし、生きやすい環境を作るという点で種の保存ではないでしょうか。

それは個体の利益に還元できる話で、「種の保存」の概念を持ってくる必要はない。

子孫を残すためなのに、どうして人間は恋愛をするのですか。

「子孫を残すため」というような考えが進化の結果生まれたのではなく、進化の結果生まれたのは「性欲」。それを実現するための方法として恋愛がある。「子孫を残すため」という生物学的な究極因と、個人レベルの「胸がきゅんとする」みたいな傾向 (至近要因) はきちんと分けて考えないといけない。

進化できる種とは、環境に適応することのできた種のことでしょうか。

環境に適応していく過程が進化の中に含まれているということで、進化していない生物はいない。

「種」と「心理学」とはどのような関係性があるのですか?

心理学というのは最終的にはヒトという種の行動を調べるために研究されているのだが、その手段としてヒト以外の動物を使った研究もする。「種の保存」のような考え方 (群淘汰の考え方) はヒトの行動を分析するときにも、つい使ってしまいがちだが、かなり慎重に扱わないといけない。

「母性」というのは、人間特有なのでしょうか?

当然、動物によって母性のあり方は全然違うんだよ。ハヌマンラングールのお母さんだって、ちゃんと守ろうとするという点ではヒトの親と変わらない。

心理学を学ぶようになってから、その人の行動の意図を考えるようになりましたが、人のためではなく自分のために動いているように見えてしまうことが多くなり、疑がい (原文ママ) たくないのに、疑うようになってしまいました。どうしましょう。

何も問題ないよね。たとえそれが「自分のため」だったとしても、それが他人の役に立つことであれば歓迎しようよ。もっと勉強すると「意図なんてどうでもいい、結果が大事なのだ」と思えるようになるはずだ。「偽善だ」と言って良い行動をしているひとをdisるのはみっともないことだと思う。

ライオンのやつはむちゃくちゃだなと思いました。

明らかに授業を聞いていない感想。ライオンの話などしていない。こういうのは当然出したことにならないからね。

どうして、子どもを殺されたのに、発情するのかわかりません。相当な変態なんですか。

それがヒトならね。ヒトの「常識」から他の動物を見るからそういう感想になってしまうのだ。そういう意味では、われわれはかなり特定の「常識」の枠にとらわれていることが、動物のことを学ぶと分かる。そもそも「何でも理解できる」と思うところが間違っているのだと思うよ。理解できないことなんて世の中にたくさんある。

先生は日本人的な視点からみるとヒネくれた人であるように感じましたが暗い青春でも送ったんですか?

よい質問だが、ヒネくれていない学者など必要だろうか?