大物は若い頃から大物なのだ

日本心理学会の大会は金曜日の朝からはじまる。はじめから出るためには木曜に広島を出る必要があるけれど、直行便はJALが1便、ANAが1便の計2便しかない。しかも、木曜日は午後から教授会 (残念なことに本学を含む多くの大学では、教授だけではなく、僕のような准教授や講師といったより下っ端の教員もこの不毛な会議に出席する義務がある。僕みたいなのが出席するのは畏れ多いので、参加資格を「教授」以上にしていただきたいのだが、いかがなものか)、教授会の後のFD研修会 (Faculty Developmentの略。学部の教育改善に関する研修会)、さらに研究科委員会をこなした後に出発する必要があった。

FD研修会では、本学が2007年の教育刷新で導入した英語のe-learning (情報機器を活用した教育) の現状が英語担当の教員によって報告された。実に辛くなる話だった。学生にとっても、教員にとっても、幸せではない状況になっているようだ。

さて、札幌では、毎朝8時にカフェランバンに行き、院生時代よりお世話になっている日本料理とらやには既に2回行った。それにしても、ランバンで飲んだパナマのゲイシャには驚いた。その前に飲んだクライスデール農園のブルーマウンテンにも感動したが、ゲイシャはさらにすごかった。カップを近づけるだけで花のような香りが鼻の中にすっと入り込む。飲むと甘さがふわっと口中に広がり、その甘さがずっと持続する。もっと飲みたい! こんなうまい珈琲を飲める店は他にあるのだろうか。お昼は北大近くの牛舎 (ぎっと) にていつも頼んでいたチキンカツカレーを食す (これまた既に2回)。

食っているばかりではない。学会では、ワークショップ「文化と進化とこころの未来」、「対人場面における「微笑み」表情の働き」、「公正感の進化と発達――比較ゲーム論」、小講演「配偶戦略の個人差と内分泌学的要因」、シンポジウム「Reciprocity, cooperation and fairness: What is unique to human and why 互恵性、協力、公正:ヒトの特異性とその理由」等に参加。1回目の「とらや」は「文化と進化とこころの未来」ワークショップのメンバーとご一緒させていただいた。結局、「大物は若い頃から大物」という話。現在学界で活躍されている大物の先生方は既に30代から優れた論文や著作を世の中に送り出しているというのに、自分の現状といったらお寒い限りである。自分は絶対将来大物にはなれそうにない。この企画の指定討論者たる (もちろん大物の) 東大H先生を前に延々「小物談義」が続いたのはよかったのか悪かったのか。大物にはなれそうにないが、少しでも近づくために不断の努力を続けよう (その場にいた若手メンバー――もちろん僕を除く――は皆さん第一線で活躍されている優れた研究者ばかりである。為念)。

明日 (といってももう今日) も朝からランバンの予定。ランバンではOさんと研究の話をしなければ。お昼過ぎには時間を作って北大のYさんと会って今後の研究計画を話し合う予定。