授業評価アンケートの分析 (学生はテキトーか?)

2009年度前期の社会心理学の授業アンケートデータを軽く分析してみた。履修者数は102人、回答者数は77人で回答率75.5%。うち、4名は期末試験の得点との対応がとれなかったので、除外 (記名式なので、期末試験の得点と対応を取ることができる)。従って、分析対象データはN=73。

学生が授業アンケートをテキトーに書いているのかどうかを検討してみよう。学生に尋ねている質問項目は以下の通り。

  1. 講義要項と授業内容が一致していた。
  2. 授業のねらいや学習目標は明確だった。
  3. 授業時間や授業回数はきちんと守られていた。
  4. 教材は授業内容の理解に役立った。
  5. 教員の声・話し方は聞き取りやすかった。
  6. 黒板や機器等の使用が適切だった。
  7. 課題 (レポート等) の出し方が適切だった。
  8. 授業は分かりやすかった。
  9. 質問や発言を促し、それらに充分対応していた。
  10. 学生の反応や理解度をみながら授業が進められた。
  11. 学習意欲をかき立てられた。
  12. 教員の熱意を感じた。
  13. 授業は全体として満足した。

アンケートでは、これらの各項目について、A. そう思う、B. ややそう思う、C. あまりそう思わない、D. そう思わない、の4件法で訊ねている。Aを4点、Bを3点、Cを2点、Dを1点として得点化した。全てAと回答しているデータをチェックしたところ20件あったので、これらを除外して分析を行う (全てDと回答していたり、全て無回答だったりしたものはない)。

なお、項目番号1から13について、それぞれ度数分布を出してみると、ほとんどの項目で4点に50%以上の回答が集まっている。分布が正規分布から外れているので、以下の分析ではスピアマンの順位相関係数を用いることにする。

出席率の自己評価、授業への参加意識については以下の通り訊ねている。

  1. この授業への出席率はどれくらいですか。(1. 20%未満、2. 20〜40%、3. 40〜60%、4. 60〜80%、5. 80%以上)
  2. 質問や発言、予習や復習など授業に積極的に取り組みましたか。(1. 取り組まなかった、2. あまり取り組まなかった、3. やや取り組んだ、4. 取り組んだ)

さて、この授業評価アンケートのデータは最終授業の前の週に取ったものである。従って、まだ期末試験を受ける前のデータということになる。もし、学生がまじめに回答しているのであれば、(そしてまともな授業であれば) 出席率の自己評価の高いものほど期末試験の成績 (100点満点の客観テスト) がよいだろうし、「授業は分かりやすかった」、「学習意欲をかき立てられた」といった項目への反応と、期末試験の得点は正の相関を示すだろう。

予測通り、期末試験の得点と出席の自己評価との間にはr=.39 (p<.01) で正の相関が認められた。また、「授業は分かりやすかった」項目との間にはr=.32 (p<.05)、「学習意欲をかき立てられた」項目との間にはr=.42 (p<.01) とやはり正の相関が得られており、学生の回答には妥当性が認められる。決して「テキトー」に回答しているわけではないことが分かる。

ポイントは、この調査は期末試験に挑む前に回答されたものであるという点だ。つまり、学生があとづけで、期末試験の得点が良かったから (悪かったから) 「分かりやすかった (分かりにくかった)」と回答したわけではない、ということである。

ただ、予習や復習など授業に積極的に取り組んだかという項目と期末試験の得点との間には有意な相関は得られていない (r=.09, ns.)。このことは、この試験の得点が、必ずしも自宅学習時間と関係をしていないことを示唆しており、反省材料である (授業時間によく理解できていれば得点が高いという関係は得られているので、授業時間外に勉強する必要があまりなかったことを意味しているのかもしれない)。

時間がきたので、今日の分析はここまで。