「心理学概論I 2015」の感想 (9 June, 2015)

学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。

近年の進化論の定説はキリンで例えると「首の長いキリンのみが高い所の草を食べることができ、首の長くないキリンは自然淘汰されていった」だそうですが、「高い所の草を食べようとして首が長くなっていった」説も無くもない、という話を聞きましたが、どうなんでしょうか。

それは多分エピジェネティックス (epigenetics) の話だと思う。「生体の遺伝子発現制御機構である エピジェネティクス研究の最近の動向」が参考になる。Wikipediaの「ネオ・ラマルキズム」も。

人は誰でも多少自己犠牲的で多少非自己犠牲的であると私は考えている。だからこそ人間は今まで生きてくることができたのでしょうか。

僕もそうだと思っている。が、「自己犠牲的」に見える行動の多くは、実はその個体にとって (あるいはその個体を乗り物としている遺伝子にとって) 都合の良い行動である。

なにかのテレビで弟を守るために自分がたかに食べられるミーアキャットをみました。こういうのは自己犠牲なんでしょうか。

弟と自分とは遺伝子を50%共有しているから、自分より若い弟を守ることは自分の遺伝子を守ることにもつながる。親が命がけで子どもを守るのも同様。

環境要因などで非自己犠牲的な個体が自己犠牲的な個体になって自殺することは考えられますか。

ところがそういう個体は淘汰される。勘違いしてはいけないのは、われわれは、実際には自己犠牲的に見える行動をとるということ。それは結局は自己犠牲的に振る舞うことが自分のためになる (情けは人の為ならず) ということを意味している。

自分の利益を優先させる個体が生き残ることは、確かにそうだと思います。しかし、そういった個体 (人間を例に) はその集団内で、時に社会的に排斥されることがあるのではないかと思います。

まさに、まさに。そういうところに目をつけるのはとてもセンスがいい。つまり、そういう行動 (例えば親切な行動) は結局利他的ではなく、利己的な行動だということ。

もし、天敵などに襲われたときに子どもを親が命を懸けて守ろうとするのは種の利益を優先したことになるのではないでしょうか。

それは種の利益ではないよね。子どもは自分と遺伝子を50%程度共有しているわけだから。

なぜ動物は交尾をして種を存続させるのですか。

それはどういうレベルで答えたらよいだろう? 至近的には「気持ちがいいから」。究極的には「複数の性による繁殖によって遺伝的な多様性を担保したほうが環境への適応上有利だから」。

種の保存が生物学的には誤りだと言いますが、ではなぜ魚や虫は大量に卵を産むのでしょうか?

自分の遺伝子をたくさん残す者がたくさんの遺伝子を後世に伝えることができるから。それは「種」全体のためではない。

大隅先生の授業でレミングが崖から飛び降りる (落ちる) 映像を観ました。

ああ、それはよかった。映像があればいいなあ、と思っていたんだよね。さすがは大隅先生。

あとアメリカンジョークって分かんないですね。

同感。でもあの動画のジョークを分かるためには結構な前提知識が必要だから、単に「アメリカン」だから分からない、ということでもないと思う。

(集団への侵入について) カルト集団を壊したい場合、潜入して少しずつ周りをこちらの考えにさそっていけば成功するでしょうか?

そういう場合は、たいていミイラ取りがミイラになる。

(レミング) 自殺したフリで生きのびる遺伝子が組み込まれているんですか?

いや、あの漫画はレトリックだから。実際には事故死だろうと言われている。

授業とは関係ないけど、体調悪かったんですか?

あれ、そう見えた? 超元気だったんだけど……。

(ライオンが乗っ取った群れの子を殺す行動) 何も殺さなくても新たに子を作ればいいだけで

そうとは言えない。メスライオンは小さい子どもがいるとオスを受け入れてくれないから。メスライオンは必死で自分の子どもを守ろうとするんだけど、多くの場合殺されてしまう。そして、自分の子どもを殺したオスライオンを受け入れる。

日本人は戦争が起こっていた頃は自己犠牲集団で

戦時中だってみんなしたくて自己犠牲的に振舞っていたわけじゃないよね。そう振舞わないと社会的に抹殺されてしまうからいやいやしていたのだろう。

ゴキブリってつぶしたら卵が散るからダメと家族に言われていたけどどうなんでしょう。

ゴキブリの卵ってすごく硬いよね。あれ、新聞紙で潰しただけでは散らないと思うし、散ってもあれがないと死んじゃうんじゃないの? (よく知らない)