学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。今日は第一回目の授業なので、「『心理学』は何をする学問か? 箇条書きでよいので、できるだけたくさん挙げてください」という課題を与え、それを出席カードに書いてもらった。いくつか抜粋。
人の気持ちを読み取る (行動などから)。
いわゆる「読心術」としての心理学。これは昔からあるが、これまでの研究では「むしろふつうのひとはふつうに相手が何を考えているか分かる」ということが分かっている。分からなかったらたいへんだ。
現代の問題 (いじめなど) を解決する力となる。
そうだとしたら、なぜいじめなどをわれわれは未だに解決できない問題だと考えているのだろう?
人がどう行動するか実験する。
これは、確かにそう。
心を科学的に理解する学問。
これも、確かにそう。だが、「理解」という言葉をどう使っているのかは気になる。
人の心をケアする。
臨床心理学では確かにそういうこともやる。
人の心を読む。
心理学者が苦手なことのひとつ。
ある行動がどのような心理によるものか調べる。
心理学者にとって「心理」とは「行動」のことなので、実は間違い。
あらゆる状況での人の心理状態を把握する学問。
状況により人の行動 (心理) は変わるので、なんとも言えない。
人間の進化を学べる。
人間の進化を心理学の授業の中で学ぶのはかなり例外的 (この授業ではそれをやる)。
「ヒト」としての行動やそのもととなった原因について学ぶことを高校からやりたいと思っていたので、この授業を履修できて良かったと思いました。
その場合、「自分はいったいどういう答えだったら納得できるのだろうか」ということをよく考えておくとよい。
動物の行動と人間の行動が一致しなかったときにその行動を証明するのに必要。
「説明」することはあるが「証明」することはあまりしない。そもそも心理学のパラダイムでは、ヒトもそれ以外の動物もロボットも、行動という意味では区別していない (もちろんヒトとそれ以外の動物には大きな違いはあるが)。
「人がどうしてそう考えるのか」を調べる学問。
そういうこともやる。まずは自分自身を内省することからはじめてみよう。友達に言われた一言で「むかっ」ときたときなんかはチャンス。なぜそういうことを言われるとむかつくのか。
文字にするとなるとあまり挙がらないものなんですね。
そうでしょ。文字にできないということは、普段からあまり考えていないということなのだ。
人そのものの存在を考える。
それはあまりに壮大で、心理学者はそういうことは言わない。むしろ人が存在していることは所与のものとする。「存在とはなにか」なんてことは心理学者は考えたこともない (考えていたら実験できなくなる)。
データの取り方を学ぶ。
これは最も重要なもののひとつ。
人の心と身体の関係について学ぶ。
「心」が「身体」と別のものだとしたら、それななんだろう? 魂?
誰もが一度は興味をもつことがある。
多分あまり興味がないひともいるけれど、心理学に興味があるひとはそう思うのかもしれない。なぜ、他の人が自分と同じ興味があると思ってしまうのだろう、ということは心理学の研究テーマになりうる。
人が人たりえる要素の1つである心を個人や全体などから研究する学問。
なぜヒト以外の動物には心がなくて、ヒトにはあると思うのだろう? そこで言及される「心」とはなにか?
哲学
確かに心理学は哲学から出てきたが、今はあまり関係ないような気もする。
なぜ犯罪などを犯してしまうのかを学ぶ。
確かにそういう研究もあるが、むしろ僕の関心は「なぜひとは犯罪を犯さないのか」。
数式や公式にとらわれない物事の核心をつく学問。
むしろ「数式や公式」が好きなのが心理学者。
自分の主観的な考えのみで人間の心理を決定付けてはならない。
確かにそうなんだけど、「ほげほげするべきだ」「ほげほげしてはいけない」ということは心理学という学問によって決められることではない。
人の自然な行動に異議を唱え解決していく学問。
「異議」は唱えないかなあ。あまりそういうことには興味がないのが心理学者とも言える。
人の心をエンドレスで考え続ける学問だと思っていたけどそうでもないのかもしれません。
「そうでもないかも」と思うのは心理学を学ぶ上でとても大事。
ヒトがある集団にいる時と一人の時の認知の違いの研究
結構具体的なものが出てきた (でもこういうのが出てくるのはやはり1年生ではないんだよね)。
人と人のかかわりと大切にする学問。
大切にするかどうかは、学問としてはどうでもいいんじゃないかなあ。
交渉がしやすくなる。
心理学者の生活を見ていると、そうでもない。