日本行動科学学会が編集している「行動科学ブックレット」シリーズの一巻として、「決める――意思決定の心理学」という本を出した。ヒューリスティックスとバイアス、集団意思決定、協力関係など社会的文脈における意思決定など、内容的には比較的標準的だと思う (後半は学部生には分かりにくい部分も多いかもしれないけれど……)。来年度の「集団力学」の授業で教科書指定にする予定なので、履修予定の学生は予習しておこう! (先に買っても特典は何もない)
中西大輔 (2009). 決める――意思決定の心理学 (行動科学ブックレット6) 二瓶社 630円 (税込)
目次
- 第1章 決めるとはどういうことか
- 第1節 序
- 第2節 意思決定の行動科学
- 第3節 意思決定の神経心理学
- 第4節 本書の構成
- 第2章 人間はどのくらい合理的な決定ができるのか
- 第1節 合理的とはどういうことか
- 第2節 ショートカットとしてのヒューリスティックス
- 第3節 埋没費用の誤謬
- 第3章 社会的影響と社会的文脈における意思決定
- 第1節 社会的文脈における様々な決定問題
- 第2節 2者間の協調問題
- 第3節 3者以上の協調問題
- 第4節 社会的影響
- 第5節 集団問題解決・集団意思決定
- 第4章 非合理的行動の合理的基盤
- 第1節 速くて倹約性の高いヒューリスティックス
- 第2節 社会的環境に適応した脳
- 第3節 社会的影響を受ける心は適応的か
- 第4節 おわりに
- あとがき
※なお、背表紙や裏表紙の裏側に「意志決定」とあるのは、「意思決定」の誤植。以下、某目的のために書いた本書の紹介文。
本書では、人間の意思決定を環境への適応と社会的文脈という2つの軸から捉えている。人間の意思決定は「伝統的な経済学」が仮定している論理的な基準から見ると非合理的なものである。しかし、われわれが意思決定の際に用いることができる情報には限りがあり、考える時間も無限ではない。こうした制約を考えると、非合理的な人間の意思決定が限定的に合理的な基盤を持つ可能性に気づく。また、人間の意思決定は他者との関係なしには考えることができない。多くの場合、われわれの意思決定は他者からの影響を受けて行われるし、われわれ自身の意思決定が他者を動かすこともある。これまで経済学や心理学の分野で蓄積されてきたデータに基づき、人間の意思決定の謎に迫った。(313字)
本書では、人間の意思決定を環境への適応と社会的文脈という2つの軸から捉えた。われわれ人間の意思決定はどの程度合理的と言えるのか。また、他者との複雑な相互依存関係の中で行われる意思決定の特徴とはどんなものなのか。経済学や心理学の分野で蓄積されてきたデータに基づき、適応論の観点から人間の意思決定の謎に迫った。(153字)