「心理学概論I 2010」の感想 (13 May, 2010)

学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。

あと私は貧血になりがちなのでマラリアにかかりにくい

いえ、多分かかりやすい。なぜなら、鎌状赤血球貧血症という遺伝性の病気でなければ意味がないので。日本人にはこの貧血症のひとはほとんどいない。

私は前の方に座ると画面が見にくいように思うので後ろの方に座るのですが、ゲームをしたり、音楽を (音もれもして) 聴いていた人がいて、がっかりしました。

たまにイヤフォンをして授業を受けている学生がいるけれど、正直ちょっと信じられないね。耳を塞いで授業を受けるなんて全く意味がない。見つけたら注意をするようにしているけれど、こんなことはそもそも教えられるようなことではないよねえ。

毎回同じような授業を受けているような気がするのは私だけですか?

いや、毎回似たようなことを繰り返し言っている。一度聴いただけではふつうなかなか頭に入ってこないので、大事なことは繰り返して話すようにしている。

適者生存という視点からいえば、ある弱点は別の分野では強みだったから生き残ることができた、という事ですか。

「適者生存」を「適応」と変えたら、そう間違いでもない。「適者生存」は「優秀なものが生き残る」という間違った考え。優秀なものが生き残るのではなく、たまたまその環境で子孫をたくさん残したものが残っただけ。

ところで、授業を受けると眠くなるのはどうしてでしょう……。

まず、本当に「授業を受けると眠くなる」という事実があるのかどうかを調べよう。授業がなくても、眠いかもしれない。

誰かさんの研究で猿の鳴き声に文法が見つかったとか、そんな発表があった気がします。

これ知らない。誰のか思い出せない?

スペンサーの「適者生存」は間違いとのことですが、これは社会学でもそのように教えられているのでしょうか?

いや、通常の社会学の授業では教わらないと思う。

概念的な話ばかりだと机上の空論ではないのかという疑問がつきまといます。

その通り。なので、心理学者は必ずデータを取って実証的に検討をする。

「障害がある人や病弱な人が生きている (生き残っている) のは意味があるからで、根絶やしにする必要はない」という話がありましたが、だから「差別すべきではない (障害がある人や病弱な人を) という話にはならない」というのが「である≠べき」ではないという事ですか?

その通り (でも、まあ逆説的な言い方だね)。障害に適応的な意味があろうとなかろうと、差別はするべきではないので。

自分は (決して家事をなめている訳じゃないですが) 切実に就職したくなく、主夫になりたいです。「出産・子育て」ということが、女性が家事をするべきだという傾向がいまだに残っている原因の1つになっているなら子供を欲しがらない、かつキャリアウーマンな人と結婚すれば、就職せずに主夫になれる可能性があると思いますか?

「就職したくない」とか言っているとキャリアウーマンにもてないよ。女も男も自立すべき。

(バソプレッシンの話) この事を全国の人が知ってしまったら、「ホルモンがさせた」なんていって浮気が当たり前みたいな空気になったら嫌やななんて事を思いました。

関係ない。ホルモンが影響しようが、しまいが、浮気はすべきじゃないので (ここでも「である」と「べき」を分けるべき)。例えば、男性の方が女性よりも殺人する率が高いけれど、「男性は殺人してもいい」ってことにはならないでしょう?

少し話し (ママ) はかわる (ちがう) んですが、最近差別と区別をかんちがいしている連中が多すぎます。私はこれに対しはげしくふんがいしております。

「最近」で始まるフレーズはたいていデマ。むかしから、そういう人は多いので。具体的にどういう例があるだろう?

先生はこれからの社会がどのように進化していくとお考えでしょうか?

だから、社会は進化しないんだって。

今までの授業の中で、「子供がどのように育つか、親に責任はない」というようなことを言ってたような記憶があります。

言っていない。「子どもの成長について、親は全ての責任を負うことはできない」ということ。もちろん、子どものしつけについて、親は重大な責任を負う。

「進化とは進歩」とおっしゃいましたが

全く逆。「進化とは進歩とは違う」。全体的に誤解をしているようなので、復習をしておくこと。

授業の始めに感想文について触れるじゃないですか? 私もあれで取り上げられたいです (笑)。これから頑張っていい感想文書こうと思います!! (笑)

なんかRCCラジオみたいね。

“優れた人間”というのは言うならばどういった人間、どういった生物、存在のことなんでしょうか?

そんなものは存在しないのに、一部の優生学者たちが「自分たちは優れていて、そうじゃない民族は劣っている」と言っていただけ。ナチスなんかもそうよね。でも戦争には負けたじゃん。

ダーウィンの進化論を考えると、”進化は社会全体のために起こる”ということだと思うのですが、それは誤解なんですよね……。

はい、誤解。進化の単位は遺伝子であって、社会ではない。ある環境で子孫を残す上で有利だった特徴を持つ遺伝子が増えて行くだけの話。例えば、浮気性の男があちこちで子どもを残すと、浮気性に影響を与える遺伝子は増えるけど、それは社会全体のためにはならないでしょう?

お酒に酔った時がその人の本性だというのを聞いたことがありますが、本当ですか?

「本性」というのをどう考えるかによる。飲酒は理性的な判断力を奪うが、それを「本性」と呼ぶべきなのかどうか。どんな紳士淑女であっても、どす黒い欲望を持っているものなので……。

(進化が) 社会全体の利益のために起こらないのなら、なぜ人間は進化するのですか? 生き残るためだけに進化し続けてきたのですか?

これはいい質問。進化に目的はない。単に、その環境で子孫を残すのに有利だった遺伝子が増えるだけの話。進化は何のためでもない。

私は心理学を人のために役立てたいです。心理学はそもそもどのように活用されるのですか? (関係なくてすみません)

心を病んでいるひとのためになるし、社会制度を設計する上で役に立つ。本気で心理学で人の役に立ちたいのであれば大学院に進学してもっと学びましょう。

くしゃみなどの行為にも意味があり止めない方がいいということにおどろきました。

いや、だからといってくしゃみでウイルスをばらまかないでね……。

“優れた人間が生きのこったわけではない”と知って”進化心理学” (?) との矛盾があるような気がした。

どうしてだろう? 進化心理学は人間の心が環境への適応の結果として生まれたと考えるけれど、その心が必ずしも優れているなんてことは言わない。

不利益になることもあるのにどうして進化するんですか?

進化は場当たり主義で、逆戻りができないから。たまたまその環境で有利な形質であっても、環境が変われば有利な形質も変わる。例えば高緯度地域ではビタミン吸収の上で白い肌が好ましいが、環境が変わって高緯度地域で紫外線量が増えれば皮膚がんのリスクが増す。

中には一卵性の双子で一緒に育っていても、まったく違う行動をとる双子がいても、おかしくはないと思いました。

それはそう。環境の影響も受けるので。

差別って無くなることはないんですか?

残念ながら難しいだろうねえ。

小学校の対義語で退化←→進化と習いました。これは、全国の小学校の教育がまちがえているんですか?

生物学的にはそもそも「退化」など存在しないので、間違い。

この授業なんだか楽しいです。

やった。

ナポレオンがにおいフェチだと知りとてもビックリです。ちなみにぼくは……(照)。

ちょっと気になるZAGZAG

1.3の「進化」についての誤解の (2) がなかったのですが、なくてOKなのですか??

え! あとで確認します、ありがとう。